「終のすみか」の現実(下)元気なうちにサ高住→ホーム 「2段階住み替え」有効

2026年8月21日(金)日本経済新聞朝刊より
有料老人ホームの費用の支払い方は大きく分けて2つある。1つは「前払い方式」。入居時にまとまった費用を支払い、毎月の負担を抑える方法だ。

支払い方法選び

家賃相当額をまとめて支払うため、月額費用は比較的安く抑えられる。家賃が追加で発生することはなく、入居期間が長くなるほど費用が抑えられるのがメリットだ。

もう一つは「月払い方式」。入居一時金がなく初期費用は少額で済むが、家賃を含む月額費用は前払い方式より高い。

前払い方式が向くのは、まとまった資産や自宅の売却益があり、同じ施設に長く住み続ける予定の人といえる。月払い方式は初期費用を抑えたい人のほか、健康状態や施設との相性次第では短期間で住み替える可能性がある人に向く。

「高齢期の住まいとお金を考える会」代表のファイナンシャルプランナー、畠中雅子さんは400回近く施設を見学してきた。その経験から「入居一時金は金融資産の3分の1程度に抑えたい」と助言する。

高値づかみ回避

介護が必要になって慌てて施設探しを始めると選択肢が限られ、高額な施設を選ばざるを得ない場合も出てくる。「高値づかみ」を防ぐ方法として畠中さんが勧めるのが「2段階住み替え」だ。

まずは元気なうちに自宅からサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などに住み替え、介護度が重くなってから老人ホームに移る戦略だ。サ高住の入居時費用は敷金程度が一般的。月額費用も有料老人ホームのような設備やサービスがないため比較的安いとされる。

2段階方式なら自分に合った施設の情報を収集する時間が確保できる。入居中に要介護度が上がれば並行して特別養護老人ホームへの入居申し込みも可能だ。

特養は民間の有料老人ホームよりも費用相場が安い。都市部の特養は満床になりやすいが、サ高住での生活を順番待ち期間に位置づけられる。

畠中さんは「サ高住で共同生活に慣れておけば入居後のストレスを減らせる。住み替えで荷物を減らせれば、老人ホームへ引っ越す際は荷物が少なくて済む」と指摘する。「元気なうちから情報を集め、自分の意思で決めることが満足度につながる」

経済的に施設に入るのが難しい場合は自宅でいかに長く安全に暮らせるかが重要になる。近年では人工知能(AI)を活用したサービスもある。

居室に設置した人感センサーのデータをAIが解析し異常を検知する見守り機能や、AIアバター(分身)との対話で睡眠や服薬の状況などを把握するサービスも出てきた。新たな技術で家族の介護負担を減らせれば、自宅を「終のすみか」としやすくなる。

65歳以上が人口の約3割を占めるが、ライフルシニア(東京・千代田)の調査では50~60代で自身の介護費用を備えていない人が約6割に達する。人生の最期まで心身ともに豊かに暮らせる場所をどこにするか、先送りできない問題だ。